同期のグループチャット:当落発表の十二語
同期のグループチャット、金曜、昼休み
当落メール、来た?
落ちた。L。
二枚当たった。W。
Receipts。
スクショ貼った。時刻まで見えるでしょ。
一枚は私の分だよね。No capで答えて。
当たる前提で有休入れてた私、Deluluだった。
先月の落選、まだ頭の中にRent freeで住んでる。
Copeしなよ。秋にもう一回ある。
Copeじゃない。Saltyなだけ。
集合場所の幹事は? 三通既読で沈黙。ゴースティングでしょ。
Lowkey、午後の会議が頭に入る気がしない。
落ちた組は当日スポーツバーに集合。Bet?
Bet。Locked in。
同期のチャットでは、全員が同じ言葉で話しているように見えます。わからなかった人は、黙っているだけ。当落を報告しているあいだに、一人が捕まり、一人が沈黙しました。

結果は一文字で済み、消えた幹事に行数の半分が使われる
報告は一文字で終わります。証拠を求め、出し、負け惜しみを言い合うのに行数のほとんどが使われて、消えた幹事が話題になり、最後にまた一語で予定が決まります。
L
負けや失敗を指す一文字スラング。「take the L」で負けを潔く認める意味。Wの反対。
チケット家に忘れた、特大のL(負け)だわ。
一文字で、結果報告が終わります。慰めはいらず、次の発言はもう別の話。
W
勝ちや良い出来事を指す一文字スラング。Lの反対。日本語の「勝ち」「ナイス」に近い。
会議でタダ飯出るの?でかいW(勝ち)じゃん。
Lの隣には、たいていこれが並びます。同じチャットに両方があると、片方がうるさく見える。
Receipts
誰かの発言や行動を裏付ける証拠、特にスクショなどを指す。日本語の「証拠(スクショ)」に近い。
彼女がしらばっくれたから、receipts(証拠)出してやったわ。
要求であって、質問ではありません。出すまで話は進まず、出したら別の話が始まります。
No cap
「マジで」「嘘じゃない」と本気度を強調する言い回し。capの反対で、日本語の「ガチで」に近い。
今年観た中で一番のライブ、no capで。
「本当に?」と訊く代わりに、「本当のことを言って」と頼む形。Capと対で、このチャットでは頼む側だけが出ます。
Delulu
非現実的な期待を抱く「おめでたい妄想」を、自覚しつつふざけて言う言葉。delusionalの崩し。
まだ返信来ると思ってる私、delulu(妄想)すぎるわ。
自分に向けて、笑いながら言う言葉。他人に向けると別の意味になるので、ここでは誰もそうしません。
Rent free
頭から離れずずっと考えてしまう物事を指す表現。「頭の中に家賃も払わず住み着く」が直訳。
2019年のあの気まずいメッセージ、頭にrent free(住み着いて離れない)。
先月のことを、まだ考えている。恨みごととして言うと重いので、家賃の話として言います。
Cope
都合の悪い現実を否認して必死に受け止めようとする様子を煽る言葉。「copium」は苦しい自己慰め。
「どうせイカサマだし」って、それただのcope(強がり)じゃん。
慰めのつもりで言う側と、煽りに聞こえる側。返事が即座に返ってくるのは、そのせいです。
Salty
たいてい些細なことで不満げ、機嫌が悪い様子。日本語の「イライラ」「拗ねてる」に近い。
マリオカートで負けたの、あいつまだsalty(不機嫌)なんだよ。
Copeへの言い返しとして出ます。本人がすぐ認めるくらいの、小さな不機嫌。
ゴースティングGhosting
連絡を一切絶ち、説明もなく突然音信不通になること。日本語でも「飛ぶ」「音信不通」と言う。
いいデート3回もしたのに、急にghosting(音信不通)されたんだけど。
相手が一人でなくても起きます。グループから消えるのも同じ言葉。「忙しい」とは混同されません。忙しい人は返事をします。


Lowkey
「ちょっと」「ひそかに」と後の言葉をやわらげる修飾語。日本語の「地味に」「密かに」に近い。
明日の面接、lowkey(地味に)緊張してるんだよね。
あとに続く言葉をやわらげます。会議に集中できない、という白状にも付きます。
Locked in
完全に集中して全力で取り組んでいる状態。日本語の「集中モード」「本気出す」に近い。
スマホもお菓子もなし、終わるまでlocked in(集中モード)でいく。
チャットを閉じる言葉。Betが始まりなら、こちらが終わりです。

次の当落も、同じ言葉で報告される
このうち何語かは来年も残り、何語かはこのチャットで終わります。どちらになったかを、誰も宣言しません。
質問と答え
ほかの言葉は。
トピックのページに、150語すべて。ここにあるのは十二語で、ひとつのチャットに出たぶんです。
なぜ英語が並んでいるのですか。
十二語のうち、チャットで英語のつづりのまま書かれているのは十一語。カタカナになったのは一語だけです。カードの対は、その両方を並べて持っています。
説明はどこから。
「Z世代スラング」のトピックから。アプリと同じカードです。

