月曜の朝、机の向こう側
ファンドのパートナー会議、月曜
担当 三件目です。前のファンドで出した創業者からの紹介で、二度会いました。今週のディールフローでは、これがいちばん良い。
パートナー うちの案件ですか、それは。インフラをやると言っておいて、これは業務の流れの製品で、インフラの話は四枚目に一段落あるだけです。
担当 端にいるのは認めます。ただ、端にいる理由がこの創業者です。
パートナー 投資テーゼから外れる案件のとき、みんなそう言います。
プリンシパル 数字を先に。いまの条件だと、うちの小切手では七パーセントです。目標持ち分は十二。小切手を大きくするか、ラウンドを小さくするか。
担当 いま七で入って、シリーズAで買い足すのは。
プリンシパル どのお金でですか。フォローオン投資に回せるリザーブは九割方すでに約束済みで、残り二年です。
パートナー なら、それが何を意味するかまで正直に言いましょう。小さく入って次を見送れば、彼女が話すどのファンドも、それをうちの台所事情ではなく彼女への判定として読みます。シグナリングリスクというのはそれです。
担当 だからこそ、リード投資家を取るか、置いてくるかのどちらかにしたい。半端が一番わるい。
プリンシパル ついでに言えば、先月のBで付いたマークアップもあります。書類では立派で、一株も売っていません。
パートナー マークアップで買い物はできません。よそのファンドにドライパウダーが残っていても同じことです。
担当 べき乗則です。このファンドを返してくれるのは一社で、それがどれかは分かりません。全部について賢くいるより、彼女について間違えたい。
パートナー わかりました。投資委員会へ持っていくときは、持ち分の問題を最後ではなく一枚目に。
創業者はこの部屋にいません。答えが決まるのはこの部屋です。二十分、三人、話の大半は会社についてではなく、ファンドについて。

ファンドは、会社より先に算数でもめる
はじめの言葉は、何が来ているかと、それがうちのものかどうか。真ん中はファンド自身の算数です。どれだけ持たなければならないか、そのために何を取り置いてあるか。最後は、この答えを外の人がどう読むかの話になります。
ディールフローDeal flow
ファンドのもとへ流れてくる投資案件の流れと、その質と量。
シードでのディールフローは、この街でいちばん良い。
ファンドが自分の出資者に売っているもので、会議と会議のあいだ、パートナーが静かに測られている数字。
投資テーゼInvestment thesis
そのファンドが何に投資するのかの筋道、または個別案件を進める理由。
あそこの投資テーゼの外。インフラしかやらない。
ふるいとして書かれ、言い分として使われます。どのファンドにもあって、どのファンドにもそれに反する一社があります。
パートナー会議Partner meeting
ファンドのパートナーが案件を聞き、どれを先へ進めるかを決める定例の場。
月曜のパートナー会議の議題に入っている。
創業者が待つのに、出られない一時間。電話で聞いた温かい返事が、はいかいいえに変わる場所。


投資委員会(IC)Investment committee (IC)
ファンドや機関の中で、投資を承認するか見送るかを正式に決める組織。
担当パートナーは賛成だが、まだICを通す必要がある。
部屋の次の段。担当が惚れ込んでいるという話が、まだお金ではない理由です。
目標持ち分Ownership target
ファンドが最終的に持ちたい会社の持ち分比率。必要な出資額の大きさを決める。
あそこは12%の持ち分が要る設計なので、小切手も大きくなる。
熱意を裏で押さえている算数。決まった割合を持たなければならないファンドは、どれだけ創業者を気に入っても小さな小切手を書けません。
リザーブ(追加投資枠)Reserves
既存の投資先を後のラウンドで支えるため、初回の出資とは別に取り置く資金。
初回1ドルにつき、追加でおよそ1ドルをリザーブしている。
発表に一度も出てこないファンドの半分。二枚目の小切手が出るかどうかは、頼まれるずっと前に決まっています。
フォローオン投資Follow-on investment
既存の投資家が、同じ会社の後のラウンドで追加に出資すること。
シリーズBではフォローオンしたが、Cは見送った。
まだ信じているのかを、数えられる形で示せと言われる瞬間。
べき乗則Power law
ごく少数の投資が、ベンチャーファンドのリターンのほとんどを生む構造。
べき乗則。一社がファンドを返し、残りは端数。
商売の形そのもので、九回外しても成り立つ理由。同時に、算数を無視したどの判断にも使える言い訳です。
ドライパウダーDry powder
ファンドがまだ投資しておらず、これから出せる約束済みの資金。
市場にドライパウダーは多いが、動いている分は少ない。
あるのに動いていないお金。それで満ちていても、調達する側には閉まって見えます。
マークアップ(評価替え)Markup
投資先の評価額が上がること。後のラウンドが高い株価で行われたときに起きる。
あれは書類上のマークアップ。誰も一株も売っていない。
ファンドの成績と、口座の中身が一致しなくなる場所。誰かが売ろうとするまでは、成功の顔をしています。
シグナリングリスクSignaling risk
名の知れた既存投資家が追加出資を見送ると、何か問題があると市場へ伝わってしまう危うさ。
シリーズAを見送られたら、シグナリングリスクは他の全員まで付いてくる。
既存の投資家が今回を見送ることの値段。リードを取るか離れるかの理由になり、少しだけ出しますがいちばん冷たい返事になりうる理由でもあります。
リード投資家Lead investor
条件を決め、主なデューデリを回し、そのラウンドの多くを引き受ける投資家。
150万ドルはソフトサークルできたが、リードがまだいない。
ラウンドが本当に待っている一人。ほかの全員は、その一人を待っています。

創業者は火曜に、一文だけ受け取る
月曜のことは何ひとつ一緒に届きません。どこか似た机の向こう側で、その一文を待たされているのは、そのときのあなたです。
質問と答え
投資まわりのほかの言葉は。
トピックのページに、150語すべて。ここにあるのは十二語で、ひとつのパートナー会議に出たぶんです。
なぜ英語が並んでいるのですか。
ファンドの中の言葉はどこでも英語で回り、机を囲んだ話は日本語です。カードは両方を並べて持っています。
説明はどこから。
「スタートアップとベンチャー」のトピックから。アプリと同じカードです。

